【コラム】令和6年11月〜 フリーランス新法が施行されました
令和5年4月28日に国会で可決・成立し同年5月12日に公布された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」=フリーランス新法が、11月1日よりスタートしました。
フリーランスとして働く方のみならず、フリーランスに仕事を発注する方も内容をしっかりと理解しておきましょう。
◆フリーランス新法 制定の目的
フリーランスの方が安心して働ける環境を整備するために、
*個人として業務委託を受けるフリーランス(事業者)と企業などの発注事業者の間の取引の適正化
*フリーランスの就業環境の整備
を図ることです。
◆法律の内容
※詳しいパンフレットはこちら。
▼取引の適正化
①取引条件の明示等を義務付け
書面の他、メール、SNSのDM、チャットツール等での明示も認められています。(口頭のみは不可)
※メール・DM等で明示した場合であっても、フリーランスから書面の交付を求められた場合には、書面で交付をしなくてはなりません。
※PDFやスクリーンショット等で内容を保存しておくことをお勧めします。
②報酬支払い期日の設定
《 例外 》
元委託者から受けた業務の全部または一部を発注事業者がフリーランスに再委託し、かつ、通常明示すべき事項に加えて必要事項を明示した場合、フリーランスへの報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で定めることができます。
③報酬の減額や受領拒否などを禁止
たとえフリーランスの了解を得たり、合意していても、また、発注事業者に違法性の認識がなかったとしても、これらは違法行為となります。
十分に注意してください。
▼就業環境の整備
④募集情報の的確表示義務
⑤フリーランスの育児介護等に対する配慮
⑥ハラスメント行為に係る相談体制の整備等を義務付け
⑦中途解約等の事前予告・理由開示
◆罰則等
フリーランスが事業者と取引をする際には、その取引全般に独占禁止法が適用されます。
また、相手の事業者の資本金が1,000万円を超えている場合は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)も適用されます。
そして、業務の実態などから判断して「労働者」と認められる場合は、労働関係法令が適用されるので、発注する事業者等は留意が必要です。
フリーランスは、「公正取引委員会」「中小企業庁」「厚生労働省」に対して、発注業者に本法に違反していると思われる行為があった場合には、その旨を申し出ることができます。
(各省庁で相談窓口が整備されています)
行政機関は、その申し出の内容に応じて以下の措置を行います。
①調査(報告徴収・立入検査)
②指導・助言、その他必要な措置をとるよう勧告
③勧告に従わないときは、命令・企業名公表の場合あり
④命令に従わない場合は50万円以下の罰金
◆偽装フリーランスに気をつけて!!
昨今の賃金水準の上昇や労働者の柔軟な働き方の実現のため等、さまざまな理由から「雇用契約ではなく業務委託契約を検討したい」という事業主の声をよく聞くようになりました。
今まで社員として働いてきた方に一旦退職していただき、あらためて業務委託契約を締結する場合は、雇用していた時と同じつもりで働かせてしまいがちになり、特に注意が必要です。
労働者性は業務の実態で判断されるため、業務委託契約書があるからといって安心はできません。
近年では、アマゾンの配送を請け負っていた下請業者と業務委託契約を結んでフリーランスとして働いていた配達員の労災が認められた事案がありました。
▼日本経済新聞 Amazon配達員を労災認定 実態は雇用、労基署判断(2023年10月4日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF048SD0U3A001C2000000
労災は労働基準法上の労働者に適用されるという大前提があります。業務委託との認識であっても、労災が認められた時点で「労基法上の労働者」という扱いになり、最低賃金の適用、残業代の支払い、社会保険・雇用保険に加入させる義務などが事業主に課せられると考えられます。
実際に、上記の配達員は残業代の支払いを求めて提訴しています。
▼NHK 「アマゾン」の業務委託の配達員 残業代求め提訴 横浜地裁 (2024年05月24日)
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240524/1000104871.html
発注側の皆さまは、くれぐれも「偽装フリーランス」状態にならないよう、ご留意ください。