【コラム】増えてます!! 有期雇用契約者への定年制適用
新年度が始まりました。
春は人事労務担当者の繁忙期ですね。皆さま、おつかれさまです!
2024年4月の法改正にあわせた就業規則変更のご依頼をいただく中で、特に悩ましいと感じるのが「高年齢の有期雇用契約労働者にも無期転換申し込み権が発生する」ことへの対策です。
“これが正解”という方法はありませんが、1つの解として「定年制の適用 + 有期特措法 第二種計画認定」をご紹介します。
無期転換申し込み権については、前回のコラムも参考にしてください。
◆そもそも高年齢者に「無期転換ルール」が適用されると何が問題?
無期転換ルールについては下記のとおりなのですが、一番の悩みどころは無期転換ルールに「年齢の上限がないこと」です。
※「有期労働契約者」には、契約社員・パート・アルバイトのほかに、定年後嘱託社員として再雇用された従業員や定年年齢を超えた年齢で新たに雇用された従業員も含みます。
・無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
・契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。
・有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は断ることができません)。
厚労省「無期転換ポータルサイト」より
つまり、定年年齢以上以上の高年齢の有期雇用契約者が通算5年を超えて契約更新となる場合も、基本的に無期転換ルールが適用され、無期転換した従業員が「自ら退職を申し出る」か「明らかに働けない=労務の提供が不可能で労働契約を維持できない」状況でない限り、会社はその方を雇い続けなければならない、ということになります。
正真正銘の「終身雇用」です。
現在、会社には65歳までの継続雇用が義務付けられています。70歳までの雇用機会の確保は努力義務となっており、高年齢者が活躍している会社は格段に増えています。
それはとても素晴らしいことなのですが、定年年齢を超えた方を「無期雇用契約」労働者として雇う必要がある、と考える会社がどのくらいあるのでしょうか?
無期転換ルールは非正規労働者の雇用の安定を目的としています。
会社には「有期雇用契約」労働者として雇い続けたいそれなりの理由があるわけで、一律に高年齢者にもルールが適用されるのは現実的ではないように感じます。
◆なぜ「定年制の適用 + 有期特措法 第二種計画認定」?
無期転換ルールにはいくつか特例があります。
そのうちの一つが「継続雇用の高齢者」です。
適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主のもとで、定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しません。
厚労省パンフレット
「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について」P.9より
この特例を利用すれば、65歳以降の継続雇用をされる方や定年後の年齢で再就職される方の無期転換権は発生しません。
利用するための条件は
・適切な雇用管理に関する計画を作成し、労働局長の認定を受けること
・定年に達した後、同一事業主に引き続いて雇用されていること
ですから、「有期雇用契約労働者への定年制の適用」を就業規則等に規定して、 「 有期特措法第二種計画認定」を受けることが有効な手段となります。
▶有期特措法第二種計画認定についての詳細は、こちら
◆まとめ
有期雇用契約に定年という考え方はなじまないとされてきました。
そのため、現状の契約社員就業規則やパートタイマー規程に定年の定めをしていない会社は多いと思います。
契約社員やパートタイマーなどの有期雇用契約労働者に、定年の適用が禁じられているわけではありませんので、60歳以上の年齢で定年を定めることは可能です。
また、60歳を定年とし、65歳を第二定年、70歳を第三定年とすることも可能です。
「就業規則にどのように規定するか」は会社ごとに違ってきますので、自社での対応が難しいときは、社会保険労務士にご相談いただくと安心です。