【コラム】2024年4月〜 影響大!!「更新上限の有無・内容」と「無期転換申込権」の明示

年度末ですね。
人事労務を担当している皆さまは、4月の法改正への対応準備で慌ただしい毎日を送っていらっしゃることと思います。
当事務所でも、新しい労働条件明示ルールにスムーズに対応できるよう、変更の内容と「労働条件通知書兼雇用契約書」のフォーマットを顧問先さまにお渡ししています。
今回は飲食業、小売業、サービス業など有期雇用契約で働くパートさんが多い会社や、嘱託社員や定年の年齢を過ぎた方を新たに雇うことの多い会社に大きな影響を与えそうな、「有期雇用契約の更新と無期転換の申込権の明示について」です。
↓こちらのラジオでも同じテーマでお話ししています。ぜひお聞きください☺️
追加して明示する事項は以下のとおりです。

◆対象者は?
パート・アルバイト、契約社員、派遣労働者、定年後に再雇用された労働者などで、6か月ごとや1年ごとに雇用契約を更新するような働き方をしている、有期契約労働者が対象となります。
▶︎有期契約労働者とは
契約期間に定めのある労働契約のことをいいます。 1回の契約期間の上限は、原則として3年です。
なお、専門的な知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者との労働契約については、 上限が5年となります
入社日や契約開始日を4月1日以降とする労働契約を2024年3月31日までに締結した場合は、労働条件の明示を新ルールで行う必要はありません。
◆改正の内容と注意ポイント
◾️更新条件の有無と内容
通算契約期間や更新回数の上限がある場合には、有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限の有無とその内容の明示が必要になります。
▶︎厚生労働省のモデル労働条件通知書はこちら。
今までは、雇用契約書や労働条件通知書の契約期間の欄に「契約期間の定めの有無」と、また、期間の定めがある契約の場合は「契約更新の条件」を記載していれば事足りていました。
令和6年4月1日以降は、契約を結ぶ際の書面に「更新上限の有無」を、上限がある場合は「回数」や「通算契約期間」を追加で記載します。
以下のような記載がおすすめです。
*契約期間は通算5年を上限とする
*契約の更新回数は4回まで など
※更新の上限がない場合も「更新の上限なし」と記載しておいた方が安心です
◉注意ポイント
契約の途中に上限を新設・短縮しようとする場合は、あらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前のタイミングで)理由を労働者に説明する必要があります。
「無期転換を回避するため」というような合理性のない理由は、当然ですが認められないでしょう。
契約当初から上限が定められていた場合でも、トラブル防止の観点から、労働者が希望するときは、できるだけ上限がある理由を説明することをおすすめします。
《記載例 1 》契約当初から上限が定められていた場合

《記載例 2 》契約当時は更新上限がなかったが、契約途中に更新上限 を定める場合

厚労省 パンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」より抜粋
◾️無期転換の申込み機会・無期転換後の労働条件
無期転換ルール自体は2013年4月に施行されており、2018年4月以降、多くの有期契約労働者の方に申込み権が発生しています。
ただ、小さな会社ではこのルールを使って実際に転換に至ったケースは少ないようで、労使ともに十分に理解できているとは言いがたいのではないでしょうか。
まずはルールの理解が重要です。厚労省が特設サイトを開設していますので、ぜひ確認しておきましょう。
▶︎無期転換ルールについてはこちら
今までは、無期転換申込みの権利があることを会社側から対象労働者に伝える必要はありませんでした。
対象労働者から「無期転換したいです!」と申込みがあれば無期雇用労働者に転換すること、とされるにとどまっていました。
2024年4月以降は、会社側から無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、「無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)」と「無期転換後の労働条件」を書面(労働条件通知書など)で対象となる労働者に明示する義務があります。
その対応として、雇用契約書または労働条件通知書に以下のような記載を追加してください
*無期転換申込機会について
・本契約期間中に無期労働契約締結の申込みをした時は、本契 約期間満了の翌日から無期雇用に転換することができる
*無期転換後の労働条件について
・無期転換後の労働条件は、雇用期間を除き本契約と同じとする
・無期転換後は、労働時間を○○、賃金を○○に変更する
◉注意ポイント
初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も、有期労働契約を更新する 場合は、更新の都度明示が必要になります。対象となる労働者が転換を望まない場合でも、契約の更新のたびに明示しなくてはなりません。
無期転換後の労働条件は、原則として雇用期間の定め以外は有期雇用契約時と同じです。
ただ、労使ともに“無期転換するのであれば正社員に近い働き方をしたい、して欲しい”など、労働条件を変更したい場合もあるかと思います。
そのような時は、個別の話し合いによる合意や就業規則で「別段の定め」をし、内容を明示してください。
《記載例3》契約期間1年の有期労働契約で、更新上限がない場合

《記載例4》契約期間3年の有期労働契約で、更新上限がない場合 ※5年を待たずに転換権が発生します

厚労省 パンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」より抜粋
◆まとめ
いかがでしたか?
思った以上に影響の大きい改正ではないでしょうか?
今後、労働者から無期転換の申込みが増える可能性が高まりました。
人手不足のなか「なぜ我が社は有期雇用契約を結ぶのか」「我が社における無期雇用と有期雇用の違いは何なのか」「正社員と無期転換社員にはどのような業務上の違いを持たせるのか」という点も含め、今後の方針を早急に定めましょう!
例えば、以下のような方針が考えられます。自社の人材戦略・採用戦略の観点から決めていきましょう。
・希望者全員を無期転換する
・あらかじめ更新の上限を設けた雇用契約を結び、無期転換の対象者をつくらない
・自社の正社員転換制度や無期転換制度で無期雇用となる者の要件を設定し、入社して一定期間(3年ほど)たった時点で選抜。不合格となった者は契約更新をしない
ただし、無期転換ルールの適用を免れるための「申込み権が発生する間際の雇い止め」や「契約期間中の解雇」、厳しすぎる「選考要件」や「転換後の労働条件の提示」は避けるべき行為ですので、お気をつけください。

無期転換ルールは会社の人事権を制限してしまうため、転換申込み機会の明示をためらう声がちらほら聞こえてきます。
しかしながら、労働条件の明示は罰則付きの義務となっていますので、会社が無駄なリスクを抱えないためにもしっかりと対応して行きましょう。
当事務所では、制度の説明・方針決めの際のアドバイス、就業規則の変更・届出、労働条件通知書フォーマットの提供、有期特措法第二種計画認定の申請等を顧問先さまへのサービスとして提供しています。
自社での対応が難しいと感じたら、スパイラルアップ社労士事務所にお声がけください!
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