【コラム】2024年4月〜 労働条件の明示事項が追加になります(変更の範囲 編)

年度がわりを間近に控えた1月〜2月は、求人・求職ともに多くなる時期です。

春に向けて、皆さまの会社でも採用活動が活発に行われているのではないかと思います。

2024年4月1日以降に締結される労働契約では労働条件明示のルールが変わります。

このルール変更により、会社の持つ人事権や今後の人材戦略・採用戦略に影響が出てくると思われますので、経営者や採用を担当している方はぜひチェックしてください。


↓こちらのラジオで同じテーマについてお話ししています。ぜひお聞きください。

2024年4月から、労働条件の明示事項が追加になります。まずは「就業場所」「業務の内容」の変更の範囲をどう書こう?というお話しです。 2024年4月から労働条件明示の…

【stand fm】ゆみくろの人事労務を語るラジオ

それでは、早速確認していきましょう。

従来明示すべきとされている労働条件に追加して、以下の事項を明示する必要があります。

そして、同じく2024年4月から求人や募集の際の労働条件明示事項も追加となります。
こちらもあわせてご確認ください。

2024年4月1日以降に労働契約を締結または更新する、すべての労働者です。

正社員、契約社員、パート、アルバイト、派遣社員、嘱託社員など、雇用の区分や期間の定めの有無は関係なく、すべての労働者が対象となります。

入社日や契約開始日を4月1日以降とする労働契約を2024年3月31日までに締結した場合は、労働条件の明示を新ルールで行う必要はありません

◉明示のタイミング
・すべての労働契約の締結時有期労働契約の更新時
書面による明示が必要

本来、会社が従業員を採用する際には、労働基準法で定められた労働条件に関する事項を、書面(雇用契約書、労働条件通知書など)で明示しなければならないとされているのですが、小さな会社ですと、出来ていなかったり口頭で済ませてしまうケースがまだ見受けられます。

今まで対応できていなかった会社は、これを機に雇用契約書または労働条件通知書を作成していきましょう。

厚生労働省のモデル労働条件通知書はこちら

◉注意ポイントと記載例
・就業場所とは、労働者が通常就業することが想定されている就業の場所のこと
・業務とは、労働者が通常従事することが想定されている業務のこと
・変更の範囲とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の変更の範囲のこと
・テレワークを行うことが通常想定されている場合は、就業場所としてテレワークが可能な場所を明示

就業場所・業務に限定がない場合は、すべての就業場所・業務を含める必要があります。
以下のような記載がおすすめです。

・会社の定める営業所
・会社の定める場所(テレワークを行う場所を含む)
・本店およびすべての支店、営業所、従業員の自宅での勤務

・会社の定める業務
・会社内でのすべての業務

就業場所や業務の範囲に限定や変更がある場合は、トラブル防止のためにも、その範囲を明確にしておきましょう。

・●●県内
・原則として○○市内。ただし、事業所が新設された場合、当該事業所に異動することがある
・本店、△△支店および■■支店

雇い入れ直後の就業場所・業務から変更がない場合は、その旨を明確にしておきましょう。

・(雇入れ直後)本社    (変更の範囲)本社
・(雇入れ直後)○○支店  (変更の範囲)変更なし
・(雇入れ直後)一般事務  (変更の範囲)雇入れ直後の従事すべき業務と同じ  

※『限定=解雇しやすい』ではありません。就業場所や業務が廃止になったとしても、会社には解雇を回避する義務があることに留意してください。

◉トラブル回避
契約社員やパートタイマーとして雇用されている従業員は、就業場所や業務の変更は“当然無い”と考えている方が多いように思います。
そのため、なんらかの事情で会社が採用時とは違う労働条件を提示すると、「こんなはずじゃなかった」とトラブルに発展することが少なくありませんでした。
採用時に「変更の範囲を明示」することで、このようなトラブルはぐっと減るのではないでしょうか。

◉採用競争力
近年、転勤や配置換えを望まない・拒否する労働者が増えているようです。
就業場所や業務に限定がない場合、会社が希望する人材の獲得が難しくなるかもしれません。
逆に、変更の範囲を限定したり無くすことで働きやすさにつながり、採用競争力が上がる可能性があります。

◉人事権・人材戦略
会社には転勤や職種変更に関して非常に広範囲で強い権限が認められており,従業員はこれに従う義務を負います。
従業員が正当な理由なくこれらを拒否することはできず、懲戒処分の対象になり得ます。
ところが、変更の範囲を限定して労働契約を結んだ場合は、個別の契約内容が優先されます。
それによって人員の配置が難しくなり、事業計画に影響を及ぼすことになるかもしれません。

◉人事制度
一般的に正社員は無限定型の働き方をするものとされており、就業規則でもそのように規定されている会社が多いと思います。
変更の範囲を限定する労働契約を“正社員として”結んだ場合、その方は就業規則上の正社員の定義に当てはまらなくなってしまいます。
そのような場合には「勤務地限定正社員」や「職務限定正社員」といった多様な正社員制度の導入と、適正な処遇を検討することをおすすめします。

解決

いかがでしたか?

まずは雇用契約書や労働条件通知書フォーマットの変更ですね。

場当たり的に労働条件を決めるのではなく、自社の事業計画実現のために必要な人材の要件を明確にして、従業員さんにどのように働いてもらうのかを決めておきましょう。

スパイラルアップ社労士事務所では、多様な正社員制度の導入支援を行っています。

自社での対応が難しいと感じたときは、ぜひ当事務所にご相談ください。