【コラム】過半数代表者選出の不備で「労使協定が無効」になる怖さ

高市政権の「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討」により一時止まっていた労働基準法改革の審議ですが、2026年9月16日に労働政策審議会労働条件分科会が再開され、議論が始ったようです。
▼労働時間法制の具体的課題について
( 集団的労使コミュニケーションの在り方( 過半数労働組合・ 過半数代表者等)、年次有給休暇 )
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001749949.pdf
「過半数代表者の適正選出を確保し、基盤の強化を行うに当たり、まずは労働基準法において、「過半数代表」「過半数労働組合」「過半数代表者」の法律上の位置付け、役割、過半数代表者に対する使用者からの関与や支援等を明確に定める規定を設ける法改正を行うことが必要」という、労働基準関係法制研究会の報告をうけ、集団的労使コミュニケーションのあり方や、過半数代表者の適正選出・担い手確保などが議論の大きな焦点となっています。
◆ そもそも労使協定とは?
労使協定は、「労働基準法の原則の例外を設ける」という重大な法的効果を持っています。
つまり、労使協定を締結することで有効となる制度には、法の趣旨を十分に果たすことができず労働者に負担を強いる面があるため、労使でよく話し合い合意した上で導入する必要があるということです。
《導入に際して労使協定が必要な制度の例》
・36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)
・1年単位の変形労働時間制
・フレックスタイム制
・年次有給休暇の計画的付与
・年次有給休暇の時間単位付与
・法定以外の賃金の一部控除
・一斉休憩の適用除外
・育児介護休業等の適用除外
ただ、多くの会社にとって、全従業員と個別に交渉し合意を得ることは現実的ではないため、労働基準法で、その事業場の労働者全員の意思に基づいて選出された「労働者の過半数を代表する者」との書面による協定をすることで全従業員にその効力が及ぶとされているのです。

◆ 今、過半数代表者について議論されている理由
皆さんの会社では過半数代表者が適切に選出されていますか?
過半数労働組合がある会社は問題ないのですが、労働組合があっても組合員数が労働者の過半数に満たない場合や組合がない会社は注意が必要です。
過半数代表者の要件を満たしていない労働者との協定が、無効となる判例がでています。

36協定が無効となれば、違法な残業をさせた事業所として監督・指導の対象です。
裁量労働制や一年変形労働時間制の協定が無効となった場合は、もっと大きな影響があります。
違法な残業に加え、1日8時間・週40時間を超えた労働はすべて割増賃金の対象となり、高額の未払い残業代が発生。経済的ダメージは計り知れません。
それほどまでに重要な意味を持つ過半数代表者の選出ですが、あまり重く受け止められていないのが現実ではないでしょうか?
「使用者が過半数代表者を指名する」「親睦会の幹事が自動的に過半数代表者となっている」など、不適切な選出や制度の形骸化が常態化し、労働条件を決める場での「労使対等」が十分に機能していないと思われることから、過半数代表者の選出方法の厳格化と過半数代表者の権限の強化が検討されているのです。


◆ 会社が取るべき対策は?
労使協定を無効にしてしまわないためには、過半数代表者の選出方法の適法性を証明できるような記録を残しておくことが有効です。
・選出の日時
・選出目的を明らかにして実施していること
・具体的な選出方法
・過半数が支持していると認められる結果であること(〇〇人中△△人の賛成)
・立候補者が選出された場合は信任投票を実施していること
また、不適切な選出を見逃さないことも重要です。

《不適切な選出の例》
・使用者が過半数代表者を一方的に指名する
・親睦会の幹事等が自動的に過半数代表者となっている
・過去に選出された同じ人が、新たな選出の話し合い無く過半数代表者となっている
・労使協定の期間ごとに選出されていない
・労使協定のための選出であることを明らかにして選出されていない
労使の負担を軽減するために「過半数代表者を複数選出する」ことや、「あらかじめ任期を決めて選出し任期中は都度選出しなくても良いようにすること」は可能です。
※任期は1年程度が妥当だといわれています
過半数代表者の役割の拡大や権限強化、過半数代表者が役割を円滑に遂行するための情報提供や便宜供与等は現在審議中ですので、進展がありましたらまたコラムでご紹介いたします。
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問題が起きてからではなく、問題になる前に見つけるお手伝いをしています。

