【コラム】退職した配偶者を扶養に入れたい! 手続きの際に気を付けるポイント※協会けんぽの場合※

「従業員の奥さんが会社をやめたそうで、扶養に入れたいと言われたのですが…」
この時期によくいただくお問い合わせです。

近年は審査が厳格化されているようで、特に『被保険者が主として生計を維持しているかどうか』を証明するための資料を求められることが多くなったと感じています。


要件が複雑なため判断に迷うことが多く、資料集めに時間と手間がかかる扶養追加の手続きが、少しでもスムーズにすすむようにポイントをまとめました。

ちなみに、従業員の配偶者や子ども等が就職して他の健康保険に加入したにもかかわらず、扶養削除の届出をしていなかったという『重複加入』がよくあります。

気づいたら、すみやかに対象被扶養者の保険証を回収して扶養削除の手続きを行いましょう。(扶養の資格喪失日は、他の健康保険の資格取得日です)

◆扶養の認定要件

まず、協会けんぽの扶養の認定要件を確認しておきましょう。
大切なのは、以下の4つです。
 1. 被保険者との続柄、同居が必要かどうか
 2. 収入要件を満たしているか、被保険者が主として生計を維持しているかどうか
 3. 原則として国内に住民票があるかどうか
 4. 他の健康保険に加入していないか

協会けんぽリーフレット『被扶養者資格の再確認とご提出のお願い』より
協会けんぽリーフレット『被扶養者資格の再確認とご提出のお願い』より

《ポイント》
扶養に入れるか否かは過去の収入ではなく『将来の収入の見込み額』と『被保険者によって生計を維持されているかどうか』によって判断します。
つまり、
*申請時から起算して、この先1年間の見込み収入が130万円未満
(60歳以上である場合 または障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する者である場合は180万円未満)
かつ、
同居の場合→収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満、別居の場合→ 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
であれば、被保険者の扶養に入ることができます。

Q:配偶者の退職時点の年収が130万円以上だったのですが、大丈夫ですか?

収入要件は、過去の収入ではなく将来の見込み額で判断します。

扶養の認定要件を満たしていれば『夫が妻の扶養に入る』『妻が夫の扶養に入る』どちらのパターンも可能です。

『130万円未満』はよく知られた要件なのですが、意外に見落としがちなのが↓です。
*同居の場合→収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
*別居の場合→ 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

《例》
◉配偶者の見込み年収 128万円 ◉被保険者の年収 240万円 の場合
⇒130万円未満はOKだが、見込み年収が被保険者の年収の半分を超えているため要件を満たさない

ただし、配偶者の見込み年収が『被保険者の収入または仕送り額の半分未満』という要件を満たせていない場合でも、年金機構が総合的に判断して被扶養者と認定される場合があります。
扶養の認定は実際の状況を重視しますので、迷った時はまず会社を管轄する年金事務所に問い合わせてみることをおすすめします。

※添付書類※
・所得税法の規定による控除対象配偶者または扶養親族となっている者 は、事業主の証明があれば添付書類は不要です。
(注)配偶者に関して、被保険者の税法上の合計所得金額が 1,000 万円を 超える場合は、所得税法の規定による控除対象配偶者とはならない ので、収入確認の証明書類が必要となります。

Q:待機期間満了後に失業手当を受給する予定です。その場合はどうなりますか?

退職した配偶者が何かしらの手当を受給する場合は、注意が必要です。

被扶養者の年間収入 には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。
合算した額が収入要件を満たしているかどうかで判断します。

*雇用保険の失業等給付の待機期間中・給付制限期間中 ⇒ 収入要件を満たしている場合は被扶養者として認定されます。
*失業等給付の受給期間中 ⇒ 基本手当が日額 3,612 円以上の場合は収入要件を満たさないため、扶養削除の届出が必要となります。
(失業手当受給中は市町村の国民健康保険に加入します

失業等給付の基本手当の受給が終わり、また扶養の要件を満たした場合は、再度扶養追加の届出をします。
基本手当の受給が始まったのに扶養削除の届出を忘れてしまった💦という手続き漏れが多いです。お気をつけください。

※添付書類※
・退職したことにより収入要件を満たす場合 ⇒「退職証明書」または「雇用保険被保険者離職票のコピー」
・雇用保険失業給付受給中の場合または雇用保険失業給付の受給終了 により収入要件を満たす場合 ⇒「雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知のコピー」

◆まとめ

従業員から『配偶者が退職したので扶養に入れたい』という相談があった際に気をつけたいポイントを解説しました。

被扶養者資格の確認は、追加手続きの時だけではなく、被扶養者状況リストの提出という形で毎年行います。

要件が複雑なため判断に迷うことが多いうえに、資料集めに時間と手間がかかり実務担当者の負担感の大きい手続きですが、
認定の要件を押さえて手続き漏れのないようにしたいですね。

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